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【連休4日目・昼】
翌朝。適度の酒は百薬の長といわんばかりに普段よりすっきり目覚め、ホテルの朝食バイキングにくり出す。
示し会わせたわけでもないけれど、隣の部屋からタイミング良く美作さんも出てきて、一緒に朝食を摂ることになった。
昨夜はけっこう飲んでいた気がするのだけど、居酒屋からの帰り道でもふらついた様子のなかった美作さんは朝からシャキッとしている。
なんだろな、この行動イケメンは。
見た目はそこそこやり手そうな普通のビジネスマン風なのに。
ホテルバイキングでそれぞれ適当に好きなものを取って和洋折衷朝食膳を作る。ご飯と味噌汁に納豆とサラダとオムレツとウインナー、普通の家庭の朝食じゃないかと。
美作さんの選択も似たりよったり。納豆のかわりにひじきの小皿を取ったらしい。
「美作さん、朝の準備に時間かかります?」
「いや、すぐにでも出れるよ。何時に出ようかって相談しようと思ってた」
そんな感じで、食後の予定を相談する。
昨夜、今日の走る予定の道を地図で確認してたんだけど、その時にこのホテルが高知城に大変近いことに気づいた。
これ、車をこのまま少し置かせてもらって歩いていった方が良いんじゃないかと思ったんだよね。
「じゃあ、チェックアウトの時に交渉しとくよ。食ったらすぐ出る?」
「そうですね」
そういうことで。
天気に恵まれ朝のスッキリした青空をバックに天守閣をカメラに納め、入り口が本丸ってアリなんだなぁ、とふたりで揃って感心し、大して広くはない公園内を一周。
俺がカメラを構えているのを見ていて興味を持ったのか、自分も写真撮影の趣味を始めようかな、と美作さんが言うものだから、俺は乏しい知識を動員して自分が持っているカメラの扱い方を歩きながら説明した。
今日助手席で自由に使ってください、と。
そんなわけで、ホテルを出発した俺たちはしばらくのんびりしたドライブだ。
といっても、松山城に日のあるうちに着きたい希望もあるので、バイパスを使って行けるところまでさくさく進む。
バイパスを降りるとそこは四万十川沿いの山道だった。
すぐ横が川だよ~と美作さんが楽しそうにシャッターを切ってくれるから、俺はチラチラ見える川面を運転に支障ない程度に眺めつつ運転手に徹する。
地図で四万十川を確認すると今走っている道の横に流れる川はまだ上流の方で、道は途中で川と別れて北へ向かい川は南へ向かうらしい。
四万十川を漫喫するなら下流まで行かなきゃらしいが、川沿いドライブはこの辺で充分だろ。凪いだ水面が色々反射しててとても綺麗だ。
「お、あれが沈下橋か。確かに、手すりとか何にもない」
言いながらバシバシシャッターを切ってくれるから、運転手としてはちらっとしか見えていないけれど後で堪能させてもらおうと思う。
川に別れを告げると今度は線路と並走する。本数が少ないのか走る電車には全く出会わないけど。こんな狭い谷間を走っていくのだから、線路を敷設した昔の人の労力に頭が下がる。
そんなわけで、宇和島に着いたのは昼過ぎだった。
「昼メシどうします?」
「コンビニ飯で良いよ。瀧本くんの番ね」
「え! そうか、美作さんに昨日の夜出してもらったんだ」
ってことは、朝食付きで宿予約する限り、昼は俺で夜は美作さんか。
なんという逆不公平。宿選びも美作さん任せだし、順番調整も美作さん任せか。
なんか、騙された感なんだけど。
しかも、美作さんの昼メシがおにぎり2つに味噌汁って。300円ちょいで済む。
ICプリカで払って支払った感すら薄いまま、コンビニ袋を持って宇和島城へ。
空いているベンチに座り、遅い昼飯となった。
宇和島城は仙台藩伊達氏の分家なお家柄故か、玄関やら建具やら細々と豪華な造りだった。このタイプもだいぶ珍しい。
この重そうな唐破風の屋根は江戸期の豪邸の表玄関で良く見るものだ。本丸ならあるが天守閣ではあまり見ない。
高い石垣を堪能して車に戻ればもう時刻は15時を過ぎていた。
「松山城は無理ですねぇ」
「明日の朝行けば良いさ。泊まるのも松山市内だしな」
「で、どこに泊まるんですか?」
「着いてからのお楽しみ。同室になるから一晩よろしくね」
えっ!?と美作さんの顔を思いっきり振り仰いでしまった俺は悪くないと思う。
悪くないぞ。うん。
「ほらほら、瀧本くん。固まってないで急ぐよ。夕飯に間に合うだろうから、さっき電話して夕飯追加してもらってあるんだ。あとひと踏ん張り、ファイト!」
「はーい……」
宿は全面的に美作さん任せにした俺に、抵抗の余地はどうやらないらしい。
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