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【連休7日目・朝】

 色々すっ飛ばして、翌朝です。  え、ズルい?  知りません。翌朝ですよ。  まぁ、結論からいえば、何にもなかった、ということで。  身体中にキスされて、くすぐったいやら気持ちいいやら。思う存分身悶えさせられて。  以上終了。触りっこすら、してない。  良かったのかな、と思うんだけど。 「あ、途中で薬屋寄ってな」  ホテルをチェックアウトして、車に乗り込んだ途端にケイさんがその一言。 「どこか悪いんですか?」 「いや。色々買っておこうと思って」 「色々……?」 「ゴムとかローションとか、必要でしょ?」  無いまんま暴走しちゃったらカズくんに申し訳ないしね、だって。  昨夜何もしなかったのはそれでか。  自分が真っ赤になったのを、自覚した。  いや、大人同士だし、ちゃんと気遣われてるんだから嬉しいんだけど。  赤裸々に言葉にされると恥ずかしい。  とにかく気を取り直して。  次の目的地に出発だ。  まだドラッグストアも開店前の時間で、ひとまずナビどおりに高速に入る。  目的地の佐世保も比較的大きな街だから、どこかで買えるだろう、ってことで。  ついでだから制汗剤とか買い足しておこう。そろそろ心許なかったんだ。  今日から車内BGMはガラリと変わった。  流行りの曲中心のランダムで、どれもそこそこヒット曲ばかり。俺でも歌を口ずさめる。  隣でちょいちょい歌ってくれるケイさんの歌声は、本当に良い声だと思う。  歌が上手いってお徳だ。  そんなわけで福岡から佐世保まで。1時間半の高速ドライブとなった。  案外近いんだな。  今日は財布出さなくて良いからね、と昨日から正式に彼氏さんになったケイさんに言われて、俺は全面的に甘えることにした。  今日はデートだって言われていたし、一応俺は彼女的立場の自覚はあるし。甘えた方が男も嬉しいのは、一時期自分が彼氏の立場にあったから良くわかる。  パスポート代がけっこう高かったから、料金表を見た時はそのくらいは出しますよと言ったけど。  良いと言われちゃ引き下がるしかない。  ゲートをくぐって入園したら、そこはすでに日本ではなかった。いや、ホントに。 「異国情緒ってこういうのを云うんですねぇ」  横浜とか神戸とか、異国情緒溢れると形容される観光地にも行ったけど。  さすがテーマパーク。別格だ。 「気に入った?」 「そうですね。でも俺は和風な方が好きですけど」 「おや、残念。まぁ、今日は海外旅行的雰囲気ってことで」  異論はございません。楽しみです。  時計を見ればちょうど昼前。 「まずは昼飯にしようか」 「その前に回る場所の目星付けましょうよ」  どちらにせよ、場所の確認からだ。  もらったパンフレットを開いて、二人で覗きこむ。 「へぇ。謎解きだって。挑戦してみる?」 「良いですね。俺、この巨大迷路行きたいです」 「薔薇の季節じゃないからこの辺は良いか?」 「でも、花はなくても庭園って綺麗ですよ? ギヤマンの美術館とかも見てみたい」  そんなわけで、ひとまず謎解きイベントの参加を申し込み、園内ボートで奥まで移動することに決定。  いざ、擬似ヨーロッパの世界へ出発だ。

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