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1-7 ひとつ屋根の下
大至急、と他の部署から回ってきた仕事はまさしく嫌がらせに他ならない。
とにかく今日中にという無理難題を押し付けられ、気付けばスーパーに寄れる時間帯を過ぎていて
ヨコは致し方なく同居人にメッセージを送っておいた。
今朝自分が作ったジャムをグルメリポーターのような顔で食していた彼の姿を思い出すと、
心が和むと同時にそんな彼を拝む時間が先延ばしになってしまったことはやはりやるせない。
煙草の煙と共にため息を吐き出して、
もう一仕事終えねば帰れない不条理に若干の絶望を覚えながら
彼のことを少し考えた。
「…いつまであの家に居れるのかな…」
ナナメが好きだ。
こんなにもハッキリしているのに、
時々こんな風に、どうしたら良いか、と思うことがある。
裏切られてそれを忘れたくて、仕事に打ち込んでボロボロになって
そんな中出会った人だ。
男かどうかなんていう考えにすら至らないほど当時の自分は追い込まれていた。
暫くは彼の顔も良く覚えられなかったし、あの吐き気がする自分の家に帰りたくなくて
こっちの方が職場に近いからとかいう理由で居座ってしまって
気付けば同居という形に落ち着いてしまった。
彼はなんでも許してくれたし、今だってそうだ。
追い出すでもなく、避けるでもなく。
かと言って「何か」になろうともしてこない。
自分は何かになりたいのだろうか、とも思う。
人に期待するのが怖くて、臆病なだけだろとも。
本当に、間違いなく惹かれていて
随分と戻れないところまで来ているはずなのに。
伝えられたらどんなにか、と何度思ったかしれないけど
自分の立場でそんなことを言えるのだろうか、なんて。
「課長〜まだサボってるんすかぁ〜!?」
狭苦しい喫煙所のドアが開き、
半泣きの部下に怒られヨコはため息をつきながら振り返った。
「うるせえな。お前に言われたくねえ」
そんな事よりもまず1秒でも早く帰るために手を動かさねばならないらしい。
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