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1-8 ひとつ屋根の下

急に仕事が増えた、遅くなる。飯は適当に。 的な短い文章のメッセージが届き、ナナメは深いため息をこぼして リビングのソファの上で天井を見上げた。 何と返せば良いものか、といまいち良く回らない頭で思案しながら 文章を組み立てようとして四散してしまうのを繰り返し やがて面倒になってソファの上に身体を横たえた。 「オムライス作ってくれるって言ったのに。ヨコさんの嘘つき」 口を尖らせながらも呟くと、なんだかより悲しくなってしまって ついに携帯端末をテーブルの上に放り投げた。 こんな事は別に今に始まった事ではないのだが、自分の嫌な部分が、本当かなぁ?、などと囁いてくるのだ。 別に本当じゃなくたってこちらがとやかく言える立場ではないのだから、 考えても無駄なのだけれど。 女の人といたらどうしよう。 とか、そんなことを言える立場では決してないのだけど。 急に食欲がなくなって、ナナメはそのまま目を閉じた。 じわっと涙が溢れてきそうで、泣かない、と自分に言い聞かせる。 きっと彼は優しいから、自分が気持ちを吐露したとて困ってしまうだろう。 そんな顔をさせてはいけない。 またあのボロボロの姿なんか見たくはないし、自分が原因なんてことは絶対あってはならないのだ。 だけれど自分の気持ちは日に日に増して行って、いつか抱えきれなくなって その時はどうなってしまうんだろう。 彼が女性と連れ立っていく想像をしてしまい、ナナメはいよいよ涙が溢れてきてしまって 自分で想像しておきながら痛んでしまう胸を頭の中で罵りながら 寝返りを打って、テーブルの上の携帯端末を睨んだ。 早く帰ってきて。 その言葉を送れたらどんなにいいだろう。 どこにも行かないで、とか。 言えたら。 どんなに。 「……苦しい…」 呟きながらも、ハラハラと溢れる涙をどうすることもできず また目を閉じた。

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