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1-10 ひとつ屋根の下
2階の寝室まで連れて行き、そっとベッドに横たえる。
服が捲れ上がって腹が見えていたので自分が変な気を起こす前に布団をかけてやった。
疲れを思い出してベッドに腰掛け、彼の頭を撫でる。
本当に、こうしていることが割と幸せで、別にこのままでも良いのではないかなんて卑怯な事すら考えてしまう。
いつかこの人に追い出される日が来るんだろうか。
そうなっても何も文句は言えないのだが。
「ん……?」
彼は今頃目を覚ましたのか、うっすらと瞳を開けて瞬きを繰り返している。
やがてこちらに気付くとナナメはへにゃりと微笑んだ。
「…おかえりなさい」
「……ああ、ただいま。ちゃんと飯食ったか?」
ヨコの問いかけにはナナメは何も答えず、頭に置いていたヨコの手に触れ
掌に頬擦りするように顔に寄せた。
「……ヨコさん」
掌に口付けされるように唇が触れ、思わず魅入ってしまう。
しかしすぐに冷静な頭を呼び戻す。
「ナナメ…、何してんだ…」
「ん…夢かなと思って…」
「は?」
意味不明な発言をする彼だったが、寝ぼけているだけかもしれない。
いい加減に手を離してもらおうとすると、
彼はちゅ、ちゅ、と掌から手首へと唇を移動させて行って
食むように手首を甘噛みされる。
「おい…こら」
その所作は残酷なほど身体を沸騰させ始め、ヨコはつい強引に手を引き戻した。
正直、彼はヨコの理性スイッチを易々と切ってくるような所があり
自分の見た目を自覚していないのか最大限に活かしているのかは分からないが
とにかく流されると危険なのである。
ナナメは苦笑して、すみません、と小さく謝っていて
それは何処か傷ついているようにも見えて
ヨコはため息を零しながらも、また彼の頭を撫でてやった。
「…っとに、何食ったらそうなるんだ」
「?ヨコさんのご飯しか食べてないですよ?」
そんなことを平気で言うし。
もしもわざとだったらタチが悪いことこの上ない。
ヨコはため息をつきながらも、おやすみ、とだけ言い残して逃げるように部屋を去るのだった。
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