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1-12 オムライス。
今日こそは卵を買って帰る。そしてオムライスを作るのだ。
ヨコは強く決意し、バリバリと仕事をこなし
なんとか残業も1時間以内に収めて逃げるように会社を脱出した。
目当てのスーパーでテキパキと買い物を済ませ、無事に何事もなく家に帰り着くと
玄関のドアを背に、
ようやく安心して深く息を吐き出すのだった。
キッチンに直行して冷蔵庫に食材を詰めた後、さっさと着替えて料理に取り掛かる。
ナナメは自室に引きこもっているらしく姿は見えなかったが
そのうち降りてくるだろう。
不在がちな両親の元で育ったヨコは
元々一通りの料理は出来ていたが、
この家に来てからスキルが加速していった気がする。
宝の持ち腐れ的にほとんど使われていなかったシステムキッチンも自分の城と化していて
たまに遊びにくる共通の知人からは「カフェでも開くん?」と言われるほどだったが
ヨコは勝手にナナメ以外にはここまでしないのだろうな、とも思っていた。
細いせいなのかなんなのかは分からないが、
何故だか彼を見ていると美味い飯を食わせなきゃという意識になってしまうし
作れば作るほど彼もまた喜ぶので、相乗効果的にそうなってしまうのだった。
きっと自分一人ではこんなに栄養バランスを考えた食事を毎日作ろうなどとは思わないだろう。
職場に持参している弁当だって彼の昼食を作り置くついでに詰めているようなものだし。
テキパキと美しいオムライスを完成させ、
あらかじめ刻んでストックしておいた野菜などで適当にサラダやらスープやらも用意し終えると
ヨコは昨日からの欲求不満がやっと解消され、よし、と一人で頷いて満足するのだった。
しかしナナメは未だに現れず、冷める前に是非食していただきたいと思ったヨコは
2階へと向かった。
2階には3つ部屋があり、
一番端の部屋がナナメの仕事場らしくあまり立ち入ったことはなかった。
「ナナメ?飯だぞ」
ノックをしながら声をかけるが、返事はない。
ヨコはドアに耳を押し付ける無駄なムーブをしてしまった後、もう一度ノックをしてドアノブを回し部屋を覗き込んだ。
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