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1-13 オムライス。
本だらけの部屋で、ジャージ姿のパソコンに向かう横顔が見えて
ひとまずは安心する。
「…あ、ごめんなさいすぐ行きます」
眼鏡の向こう側の目は画面に向いていた。
珍しく真剣なナナメの横顔に、
観察したくなりそのままの状態でじっと彼を見つめる。
適当に縛った髪とおじいちゃんのような銀縁の眼鏡に
ジャージというダサい格好で、本に溢れた狭苦しい部屋で、
そんなものすらアートですとでもいうように絵になる横顔には感心するくらいだった。
彼がちょっとめかし込んで街でも歩こうものなら男だろうが女だろうがすぐに寄ってくるだろう。
そんな彼を自分だけが独り占めしている事が不思議でもあり、嬉しくもあり、不安でもあった。
出不精な彼に甘んじているものの
誰かにとられるかも、と少しは焦った方が良いことは間違いのだけれど。
「…ふう」
ナナメはようやく作業が終わったのか、
キーボードから手を離すと丸めていた背中を伸ばして眼鏡を外した。
ようやくこちらを見た彼と目が合うと、ナナメは驚いたように目を丸くする。
「よ、ヨコさん…?びっくりしたぁ…」
ナナメは、はぁ、と息を吐き出すと
こちらへやってきて半分開きかけていたドアを大きく開いた。
「もうっ、何してるんですか」
「いや別に…」
「覗き見なんて悪い子ですね?」
困ったように微笑んで見上げられ、
ヨコは世界の時が止まるのを感じた。
「お腹すいたー今日のご飯は何かなー?」
時の止まったヨコを通り過ぎて歩き出すナナメの歌うような独り言を聞きながら、
いや、本当に。焦った方がいいぞ俺、などと自分に言い聞かせるのであった。
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