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1-16 オムライス。

「は?どういう意味だ」 ヨコの言葉に、ナナメはテーブルの下で両手を握りしめながら 止まりそうになる視界の中、必死に言葉を構築していた。 震える身体を椅子に縛り付けて、やがて静かに微笑んで彼に向き直った。 「ヨコさん?」 嘘をつくのなんか得意だろ、 言え。言えよ。 「ヨコさんのこと、 ちゃんと好きになってくれる人、探してくださいね」 優しく、傷付けずに。 それが自分の精一杯だった。 もっと酷い言い方ができたなら楽に違いない、 相手に嫌われるようにしてあげた方が親切だ。 そんなこと分かってるのに。 なんでこんな時にもいい子ぶってしまうんだろう。 ナナメが必死に微笑みを保っていると、 やがてヨコは小さくため息をこぼして目を逸らした。 「……相手がどうかはしらんが、 好きな人はいる。」 「……え……」 ナナメは急に地獄に突き落とされたように世界の音が消えて行って、 身体の芯が冷えていくのを感じた。 そんなの分かっていたことじゃないか、 覚悟していたじゃないか。 寧ろ覚悟も何も、決まりきっていることで。 終わりが突然きた気がして、 ナナメは必死に自分の膝を抓って泣かない努力をした。 笑え、笑え、と言い聞かせて。 「へ、へえ〜、そうだったんですね…!それはよかった…! うん!すごく!すごく、よかった…」 居心地が悪そうに目を逸らしている彼に、ナナメは段々と胸が掻きむしられるような 今まで感じたこともないような虚しさに襲われて 急に込み上げてきた涙に、まずいと感じ慌てて立ち上がった。

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