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1-17 オムライス。

「ナナメ?」 「あ、あー俺、急ぎの仕事、思い出したかも、」 必死に言い訳を構築し、急いで食器を片付けて流し台に走った。 涙がもうすぐそこまできていて、どこに逃げようかと考える。 どうしようどうしよう、と自分の内側が一人で勝手に焦っていて 一人で勝手に悲しくなって、苦しくなって。 「あの、本当に美味しかったです、ごちそうさまでした…!」 ナナメは必死に理性で押さえ付けて、 足早に部屋を出ようと彼の横を抜けた。 「おい、待て」 もう少し、我慢して、と必死にドアめがけて歩いて行っていたのに 彼に腕を掴まれてしまって ナナメは必死にその腕を振り払い、走った。 無我夢中で階段を駆け上がり、一番近くにあった寝室のドアに飛び付き 部屋に転がり込んで後ろ手にドアを閉めた。 溢れてきていた涙が、だらだらと頬に伝っていて ずるずると崩れ落ちるようにドアを背に座り込み、両手で顔を覆った。 最悪だ、最悪だ、最悪だ。 絶対変だと思われた。 なんでこううまくいかないんだろう。 好きな人の幸せを願うことも、 得意な嘘を肝心な時に発揮できないことも、 こんな風にすぐ泣くことも。 本当に、バカみたいだ。 自分の全てが嫌になって、 地獄のような世界でナナメは泣きじゃくった。

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