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1-22 あなたと俺の齟齬

「…、なんで?」 彼の前だと恥ずかしすぎて自分の身体を隠すように、脱げかけた服を握りしめた。 乱れた呼吸を繰り返しながら、永遠に涙が溢れてくることにも本当に呆れるのだけれど。 「なんで、とは」 「……だっ、て俺なんか…に触らなくても…」 「なんか、か…」 今までだってずっと代わりで、 きっと辛い経験を忘れるまでの間の割り切った関係で。 別にそこには心はもちろん、 顔とか体とかは関係ないのだと思っていた。 よくはないが悪くもないから大して拒否もされなくて、みたいな。 だけど今は違う。 ちゃんと他に目を向けられるくらいには彼が癒やされたのだとしたら わざわざ自分なんか相手にしなくても良いのに。 「触りたいから触ってるだけだけど」 ヨコはこちらに近寄ってくると、ナナメの頬に触れてきて ナナメはそれから逃げたいようなもっと触られていたいような 相反する感情に翻弄されて、彼を睨んだ。 「…だから、なんで…っ!」 「お前が好きだからだよ」 ぐい、と両頬を抓られて彼は眉根を寄せてそう答えた。 その言葉の意味が理解できず、ナナメは抓られたまま目を見開いた。 「……は、…え…?」 「こんな風に泣いたりして、無防備なんだよお前は めちゃくちゃにされても文句言えないからな」 ヨコはどこか怒っているように睨んできて、 そんな彼の言葉が何一つ理解できず、ダラダラと泣きながらその顔を見上げ続けた。 なんでこの人こんな格好いいんだろう、 などと今と何も関係のない事を考えてしまう。 憎らしくなるほど好きでたまらないその存在だから。 「いいのか?逃げないんだな?」 そんなの、ダメだと分かっていても、 逃げられるわけないのに。

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