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1-30 トラウマといまから
「真壁くーん。きたぜ赤紙、ヤッタネ」
「…げ、マジか……」
やはりただ怒られるだけじゃ済まなかったらしい。
赤紙と揶揄されているからには相当嫌な仕事が回ってきたようだ。
嫌な予感に白目になりながら紙を奪い取る。
「主張か?いつ?」
「明日から」
「あ、明日…!?」
ヨコは思わず叫んでしまいながらも
その薄ペラな紙に簡単に書かれた激重な仕事を何度も読み返し
深々と溜息をこぼした。
「何が回ってきたん…?」
裾川が恐る恐る聞いてくる。
「九州出張」
まさかいきなり県外に飛ばされるとは思わなかった。
しかも明日からというあり得ない日取り、
パワハラというかこれはもはや拷問ではないだろうか。
「ほ、ほ、本当にごめんなさい……」
「いやこれ残る方も地獄だろ…大丈夫ですか裾川さん」
「雨咲ちゃんは俺が守る!」
裾川は、ヒーローの変身ポーズのような謎のポージングをしながら
心強いことを言ってくれるが
ただでさえ人数が少ないというのに、この気まずい状況の彼女を置いていくのも心配だ。
隣部署の同期である女子社員にも託けておかなくては。
その前に今日と明日でやろうと思っていた仕事もせねばならないし。
九州行きの準備もしておかなくては。
ていうか休み返上だし。
頭の中で計算しすぎてショート寸前になりながらも、ヨコはミナミの肩を叩いた。
「ミナミ…明日…9時に成田…絶対寝坊するなよ…」
「えええ!オレも!?」
こんな仕事は辞めたい!
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