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1-39 残していって。

「できれば俺はお前に愛されたいんだが」 彼に顔を近付けるが、ナナメは泣きながら顔を逸らしてくる。 「違う…、俺じゃだめです…」 「何がだめなんだよ。違うことないだろ」 「違いますよ…っ!」 逃げそうに暴れる彼の手を掴み続けていると、ナナメはこちらを睨んできた。 「だって俺はっ男で、しかも30のおっさんで、 美少女でもレースクイーンでもなくて、あと..あと、 料理も作れないしエロ小説書いてるし、すぐ泣くし..あと.. とにかくっ色々、..違うじゃ、ないですか...っ」 ナナメはボロボロ涙を流し、一頻り叫んだ後 肩で息をしながら抵抗する力を抜いた。 「...........エロ小説書いてんの...?」 相変わらず彼の脳内はよくわからず色々ツッコミ所はあって戸惑いはしたが、 とにかくその自信のなさがただ露呈しただけでヨコにとっては何の支障でもなかった。 エロ小説は気になるが。 「...どこが違うんだよ。お前はお前だろ」 そんなこと何も気にしなくていいのに。 ヨコは彼の頬を撫で、額に口付けた。 「全部関係ない。ナナメが好き」 性別とか年齢とか、その独特な思考回路とか、そういう強情なところとか 腹が立ったり、何故伝わらないかと悩むような所であったとしても 結局全部が彼を構築している大切な要因で そのどれもに自分は惹かれてしまっているのだと思う。 どんな顔をしているのかと見下ろすと、 ナナメは唇を噛んだまま顔を赤くして震えながら、不安げに滲んだ瞳で見上げてきて こういう残酷なところも、それにまんまとやられる自分にも本当に呆れるのだけれど。

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