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1-43 残していって。

彼の腕が首の後ろに回って、ぎゅ、と抱き付かれる。 「…、も、だめ、…っイ…ちゃ…」 がくがくと震えながら、掠れた声が呟く。 色々と我慢していたせいもあり、自分もそろそろ限界に近かった。 ヨコは彼の頭を持ち上げて再び唇を奪った。 触れるだけのキスを交わすと、じいっとナナメに見つめられて 涙で潤んだその茶色っぽい瞳を見つめ返した。 「ん、ヨコさん…なか、だして…」 「あ…?」 「おねがい…」 ナナメはそう言いながらヨコの唇を指でなぞり、やがて口の中に親指を突っ込んできた。 唇を重ねられて、指を増やされ、口を開きっぱなしにされながら舌を絡められて 彼は本当に自分の思考を奪うのが上手いらしい、と内心苦笑するヨコであった。 「ん、…はぁ、ぁ…っ、ン」 開きっぱなしの口からはだらだらと唾液が溢れて、彼にしてやられながら 腰を突き上げると彼の中に、きゅう、と中心を締め付けられて 彼の中に精を吐き出した。 「…ッ、ん、あ…っ、あ…」 びくびくと痙攣する身体を暫く抑え付けるように抱き締めて、乱れた呼吸を繰り返す。 彼も達してしまったらしく、暫く打ち震えていて 身体を密着させたまま余韻に浸っていた。 「…ヨコさん……」 「…ん」 彼は再びぎゅっと抱きついて来て、その頭を撫でてやった。 彼の香りと多幸感に包まれながら今まで感じたことのないような、じんわりと暖かく胸に起こっている気持ちに ナナメはやっぱり凄い奴だな、などと勝手に思ったりした。 「俺…は、ヨコさんじゃないと勃たないですよ…」 「はぁ…?」 また素っ頓狂なことを言われて思わず彼の顔を見てしまう。 ナナメは切なげに眉を寄せていて、 ああなんか、不安になってる場合じゃないのか、と悟ったような気がした。 「それはそれは光栄です」 彼の頬を撫でながら、たくさん愛したい、と思った。 不甲斐ない自分でも彼のために出来ることなのであれば たくさん、たくさん、愛したい、と。

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