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1-44 ファーストタイムデートデート

なんか現実じゃないみたい。 ナナメは未だに頭がふわふわするのを感じながら、食器を洗っていた。 お亡くなりになった冷蔵庫だったにも関わらず、 彼はそれなりのものを夕食として提供してくれて感動ものだったが せっかくの食事の味もよく分からないくらいナナメは夢心地だった。 絶対に聞き間違いのような気がしてならないのだが 自分のことを好きだと彼が言ってくれたような気がして それが本当のことなのか、 辛すぎていかれた自分の脳が作り出した幻想なのかイマイチ区別がつかないのだった。 それでも幸せに包まれて調子に乗っている自分がいるのも確かで 本当に、いい加減にしたほうがいいと思うのだけれど。 流し台のあるキッチンカウンターからは、 2人では少々広いリビングとダイニングが見渡せて ガラスドアの向こうのベランダに、煙草を吸う彼の背中も見えた。 あーなんか、新婚さんみたいじゃない? ナナメは勝手にそう思って勝手に恥ずかしくなって変な笑みを浮かべてしまう。 彼がこの家で過ごしていることが、改めて奇跡みたいに実感してしまう。 1人で過ごしていた時の記憶なんか掻き消えるくらい、当たり前になってしまっていて こうして噛み締めていると、 幸せすぎて、ありがたすぎて、どうしたら良いか分からなくなる。 「まずいなぁ…」 本当に。 こんなに好きになって、自分は一体どうするつもりなのだろう。 ついつい舞い上がって、好きだとか言ってしまったけど 彼の人生になんの責任も取ってあげられないのに。 ナナメは複雑になりながらも、泡だらけになった食器を手に持ったまま小さくため息をこぼした。 そんなことをしていると、ヨコがベランダから戻ってきてこちらに近付いてくるので ナナメは慌てて皿洗いを再開させる。

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