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1-51 ファーストタイムデートデート
「ああ...ヨコさんにだけは知られたくなかったのに..」
ナナメは嘆くように両手で顔を覆っている。
「なんでだ」
「ええ…だって引きません…?」
「別にいいんじゃないのか。好きなんだろ」
「まあ、っていうとちょっと色々誤解されそうですけど…
官能は致し方なくですね、書いてるだけで」
別にエロい事が好きなわけじゃなくて、いや好きですけど、いやそういう変な意味じゃなくて、ああなんて言ったらいいですかね、
とナナメは目を泳がせながら1人で騒いでいる。
ヨコはそういう芸術的な分野には疎い方だと自負しているが、
人の仕事にあれこれ言えるほど偉い人間でもない。
ましてや好きな人がしている事など否定しようもない。
「俺はそういう世界はよくわからんが、
ちゃんとやってるならケチ付けるようなもんでもないだろ」
寧ろ一人で何かを産み出して世間に発信しているなんて素晴らしいことではないか、とすら思う。
自分は結局は社会の歯車的な社畜であるし、それが嫌だとか惨めだとかは思わないが
自分にできない事をやっている人間というのは素直に尊敬出来ると言えるだろう。
「普通にすごいと思うけど」
「ヨコさん…」
ナナメはキラキラした目で見つめてきて、
眩しくて変な気を起こしそうで思わず彼の目を片手で覆った。
「うわっ何するんですっ」
ナナメはわたわたと慌てて視界を奪うヨコの手を掴んだ。
「変な気分になるからあんまり見つめないでクダサイ」
そう言って、ポケットに手を突っ込んで目を閉じた。
心を鎮めなければ。
昨日もまた暴走してしまったし、いい加減にしろと自分で思ってはいるのだけれど
どうにも彼相手だとそうもいかない。
えーなんですかそれ、とでも笑うかと思ったがナナメは黙っていた。
ちらりと隣を見ると、ナナメは顔を赤くして俯きがちに静かに座っていた。
なんでそんな反応するんだ、と思いながらこっちまで恥ずかしくなってヨコはまた前を向いた。
こんな、まるでピンク色みたいな、ものに、自分が居るだなんて。
なんか、そわそわする。
いや、ふわふわするといった方がいいのかもしれない。
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