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1-52 ファーストタイムデートデート
動物園は、平日なのもあって比較的空いていた。
親子連れやカップルの中、男2人での来園は少々浮いていたが、
すぐに気にならなくなった。
カンガルーが以外と可愛くなくて何とも言えない気持ちになったり、
左の言った通りキリンの睫毛が異様に長くて恋に落ちそうになったり、
ウサギみたいな小動物がいて、ナナメに似ていると言われたので報復に彼の携帯端末を奪って
その小動物を撮影して待受にしてやったりした。
ヨコは度々動物にダッシュで逃げられショックを受け、
ナナメはその落ち込む背中を撫でたりして
思っていたより数倍楽しかったし、
確かに彼と居られればどこだって楽しく居られるのだろうけれど
こんなまるで普通の恋人同士みたいなことが出来るのが本当に幸せでならなかった。
帰りは少し手前の駅で降りて、当初の予定だった大きな公園に寄り道した。
色付いた木々の間の小道には犬の散歩をしている人やトレーニングで走っている人もいる。
夕方だから人は疎らだったが、秋を感じさせる風景の中を2人は並んで歩いた。
ナナメは、手を繋ぎたいなぁなんて思ったりもしたが黙っていた。
本当は隣を歩けるだけで奇跡なのだ。
昨日はつい、好き勝手に想いを吐露してしまったけれど
ヨコは凄く立派な青年だと思うし、きっといつかそれなりの良い女の子が現れるだろう。
その子といずれは結婚して、子どもが生まれて、どこにでもある普通の幸せな家庭の一員になるのだ。
その方が自然だし、その方が幸福だ。
浮き足立ってはいたが、自分が長い時間一緒にいられないことはわかっていて
それでも大事にしてくれるから、少しだけ甘えたかっただけだ。
そんなに遠くない未来に少しでも、
楽しかったですね!と、笑って、お別れが出来るように。
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