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1-65 あなたの側で

リビングのドアが静かに開いて、ナナメは思わず飛び起きた。 「…ヨコさん!おかえりなさい!」 スーツ姿のヨコが立っていて、その姿がいつにも増して輝いて見えてしまって 身体が怠かったのも瞬時に忘れ彼に駆け寄り抱き付いてしまった。 「ただいま…」 彼に頭を撫でられて、ナナメは大層幸せになりながら その無表情の顔を見上げて微笑んだ。 ヨコはどこか戸惑ったように目を細めている。 「…ヨコさん?」 何か嫌なことでもあったのかとついその顔をじっと見つめてしまうと ヨコはナナメの頬に触れてくる。 「……その、…身体、…大丈夫か…?」 「あー」 彼の言葉に確かに今日一日苦しみはしたのだが、 そんなことをすっ飛ばして昨日の一件を思い出してしまい、つい頬が緩んだ。 「えへへ…」 「えへへじゃねえよ…なんだその顔は」 「なんか、ヨコさんにいっぱいしてもらっちゃって 俺幸せだなーって」 日頃の運動不足も少々祟っているのかもしれないが、 それでもこの身体の痛みが無性に愛おしく感じてしまって でれでれしているとヨコは無表情のままナナメの身体をそっと引き剥がした。 「……ばか」 どこか顔を赤くしながらも小声で呟き、逃げるようにドアを振り返る彼に ナナメは思わず、えぇ…?、と零してしまう。 「なんでそんな可愛いんですか…?」 「煩い!着替えてくる!」 ヨコはそう言いながら去っていってしまった。 あんなに公衆の面前で堂々と好き好き言っておきながら、 なんでそこで照れるのだろうかとナナメはついキュンキュンきてしまい 「かわいすぎる…!」 などと叫ぶのであった。

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