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1-66 あなたの側で
彼の作った美味しい食事を一緒に食べて、同じベッドに入る。
今までとそんなに変わらない生活のはずなのに
なんだかどれも新鮮にすら思えた。
風呂上がりの濡れた髪をタオルで拭きながら、ベッドの上で彼を待っていると
なんだか無駄にそわそわしてしまって、
ナナメはまた自分の中の乙女がきゃーきゃーと騒ぎ出すのを感じ
思わず倒れ込んでジタバタした。
良い歳して相当気持ち悪いわけだが、それでもはしゃがずにはいられない。
今まで誰とも付き合ってこなかったという訳ではないのだが、
こんなに大好きな人は初めてだったから。
「……何やってんだお前」
「よ、ヨコさん!」
暴れていたせいでドアの開く音に気付かず、ナナメは慌てて飛び起きた。
恥ずかさと色々とで顔を赤くしながらも、白い目で見てくるヨコに苦笑した。
「ちゃんと乾かさないとキューティクルが死ぬぞ」
ヨコは無駄に女子力な発言をしながらも、タオルを拾い上げてナナメの頭に被せると
わしわしと髪を拭いてくれた。
「えへ…ありがとうございます…」
彼は相変わらず無表情だったが、ナナメは至近距離に
ついついどこを見ていいかわからず俯いたりする。
「...返事、まだ聞いてないんだけど」
頭を撫でるように髪を拭かれながら、じろ、と睨まれる。
「うぇ…?」
「俺一応告ったんだが」
彼の言葉にナナメは頭に血が昇るのを感じた。
「…え…ええっと…」
心のどこかで未だに、本当にいいのかな、と呟く声があるのは
致し方がないことなのかもしれないが
ナナメはその瞳を見つめ返した。
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