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2-1 それからの俺たち。
季節は移ろい年を越して、春がそこまで来ていた。
セフレという関係から脱却し、晴れて恋人同士となったヨコとナナメは
最初こそ恋人という新鮮な響きにそわそわしていたが、
元々一緒に住んでいたのもあってかすぐにいつも通りの穏やかな日常になっていった。
年末はお互いに忙しく、正月が過ぎてからも仕事が山積みで
ヨコはしばしば会社から帰ってこないこともあったし
ナナメはナナメで、自身のエロ小説“赤と黒のベッドサイド”が有名書店グループが勝手に選ぶ賞を受賞してしまい
その賞自体が第1回目だったということもあり注目度が高い中
担当編集が「神作」と太鼓判を押した例の小説“氷溶かす”も、
官能小説界ではない所の割と大きめな賞をあっさりと取ってしまったらしく
連続受賞という所で、度々お門違いな雑誌で取り上げられ業界を賑わせたらしい。
何かコメントを、と様々なメディアに向けた文章をいくつか書いてFAXしたり
取材を受けたりとそれなりに忙しかった。
初デート以来、初詣として近所の神社にいったくらいしか2人で出かけることは出来ていなかったが
それでもお互いにある程度は我慢出来たし、
節度ある付き合いをしていた。と思う。
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