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2-3 新年会のミューズ

「いやーん七瀬チャン!お久しぶりね」 大きなホールである会場の扉をくぐろうとした時、甲高い声をあげながら女性が走ってきた。 女性に抱きつかれナナメは倒れそうになるのをなんとか踏ん張った。 「とと…、雪雛先生!お久しぶりです」 派手な化粧を施し、黒いドレスを大人の色気を爆発させながら着こなす彼女は 女性であることを隠し、雪雛玲一郎という名前で官能小説を書いていて ナナメの先輩と言ったところだった。 雪雛は男ばかりのパーティ会場で一際目立っていて、 というのも女性編集者ですら珍しいガチの官能小説界に女流作家は希少な存在なのだ。 「このエロ、受賞おめでとー!」 このエロ、とは勝手に選ばれて受賞していた"この小説がエロい!大賞"の略である。 タイトルだけ聞くと何とも不名誉な気分になるが、第一回ということもあり官能小説家内にとどまらず数々の小説家が狙っていたらしい。 「しかもセツナ賞も取ったんですってね、まさに破竹の勢いってやつう? いつも買ってる女性誌にも載ってたわよ? はいこれ、プレゼント〜」 雪雛は身体を離すとにこにこと微笑んで 手に持っていた紙袋を差し出してきた。 「ええ、そんなぁ… 先生に色々教えてもらえたおかげで今の俺があるんですよ? 寧ろお礼をしなきゃいけないのは俺の方なのに…」 彼女はまだナナメが駆け出しの頃から可愛がってくれていて 自分が官能小説家としてどうにかやってこられたのも彼女のおかげという所が大きかった。 「良いのよー自分が取るより嬉しかったんだから」 「セツナ賞だって袖野さんのおかげだし…」 「いやいや実力ですわ。」 袖野はキッパリとそう言い切って、 ナナメはますます泣きそうになってしまう。 「そうよぉ〜?いいから受け取って?ね?」 「うう…なんかすみません…」 「まあそういうとこがますます何かしてあげたくなっちゃうから 七瀬ちゃんの強みかなぁって思うけどね」 ナナメは雪雛からやたらとずっしり重い紙袋を受け取って、 彼女の言葉に、本当にいい人だなぁと感謝するのであった。 「しかしこうしてみると七瀬ちゃん男の子だったのねえ」 雪雛はナナメのスーツ姿をまじまじと見ながらそんなことを言った。

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