72 / 121
2-4 新年会のミューズ
「あれ、やっぱスーツ評判悪いですねえ…」
ナナメは隣に立っていた袖野を見上げながら呟いた。
「なんか高校生みたいやと思いません?」
「それねえわかるぅ」
袖野の言葉に雪雛は人差し指を立てた。
折角久方振りに着てみたというのに、
一体みんなは自分に何を期待しているのだろうか…。
「やっぱり着物でくればよかった」
「着物はダメよ!可哀想な子がまた増えちゃうわよ」
「ほんまそれですわ…ボクも被害被るんでやめて頂きたく…」
毎年ナナメは作家らしくと着物で来ていたがいつも帰りに誰かしらから怒られてしまう為
今日はスーツで馳せ参じた所存であった。
「それを言うなら雪雛先生はどうなんです…」
ばばんと胸の開いたドレスを着ている雪雛の胸元をガン見しながらナナメは苦笑した。
「私はぁ、わ・ざ・と、やってんのよぉ」
彼女はバサバサのまつ毛でウインクをしながらそう言った。
雪雛玲一郎は、五虎七瀬と同じく顔出しをしない作家だったが
こういう時の彼女は人一倍目立っているようだ。
「じゃあね七瀬ちゃん、またあとで」
「あ、はい。ありがとうございましたっ」
雪雛は軽くナナメの肩を叩くとまたパタパタと走って行ってしまった。
他の出版社のお偉いさんと話し始める彼女の姿を、パワフルな人だなあと思うナナメであった。
さりげなく腕を絡められ偉いおじさん達は嬉しそうだ。
「雪雛せんせー相変わらずやなぁ」
隣に立っていた袖野はおかしそうに笑いながら呟いている。
「うう、申し訳なかったなぁ…先生何くれたんだろ…」
無駄に重い紙袋を覗き込むと、可愛い包装の紙袋や箱がたくさん入っていた。
その中の一つであるピンク色の紙袋を取り出して中を開けてみる。
「どーせエロ下着とかやろ」
彼が言うと同時にナナメは袋の中から品物を取り出すと、
ピンク色のレースでできたスケスケ下着が出てきて、
袖野は噴き出してゲラゲラと笑い始める。
「ええ…これを俺にどうしろと…」
「いやブレへんなーあの方は」
とはいえ貰ったものを蔑ろにするわけにはいかず、また丁寧に梱包して紙袋に戻しておいた。
他の箱やらも嫌な予感がするので、家に帰ってからにするとしよう。
ともだちにシェアしよう!