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2-8 新年会のミューズ
會下、會下…って會下詠慈!?
大作家の名前を思い出し慌てて立ち上がる。
「えっ、あ!初めまして!五虎七瀬です!」
緊張で背中が伸びてしまう。今日一番じゃないかと言うほどだった。
官能小説を嗜むもので會下詠慈の名を知らぬものはいない。
それくらい會下は超大御所の作家だった。
一部では神と崇められているほどである。
勿論ナナメも知っていたし本も持っていたが、実際会うのは初めてである。
「やはりそうでしたか!お会いできて光栄です」
男は紳士的に挨拶をした。
「そんなこちらこそ…會下先生に存じていただけているだなんて」
「受賞作品読みましたよ、あれは素晴らしかった」
ロマンスグレーの紳士、會下はにっこりと微笑んだ。
若い女の子だったらメロメロになってしまいそうな大人な魅力溢れる笑顔だったが
突然現れた生きる伝説にナナメは失礼がないようにと気を張ることで精一杯だった。
「わわ…そんな、恐縮です…」
ナナメは何を言っていいかわからず俯きがちになってしまう。
「しかし驚きました。五虎七瀬先生がこんなに麗しい方だったとは…」
うっとりと見つめられナナメは緊張やらなんやらでどういう状況なのか理解できず反応に起こせなかった。
ぽかんとしているとやがて片手を両手で取られる。
「あなたは官能小説界のミューズだ...!」
「…は、い?」
顔を近付けられ、ナナメが戸惑っていると急に腕を掴まれ引き剥がされた。
「ハイ。そこまで〜!ここからは延長料一億円になりますゥー」
袖野が2人の間に立っていた。
変態を見るような白い目で會下を見下ろしている。
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