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2-9 新年会のミューズ
「うわっ袖野くん…げ、元気だった?」
「あんた本当見境ないなあ」
大御所に向かって袖野はいつもとさして変わらぬ口調で物申していて
改めてナナメは袖野を尊敬してしまうのであった。
「すみません、先生は美形な方には目がないんですヨ…」
更に會下の後ろから暗い笑顔を浮かべた眼鏡の男が現れた。
會下の肩をガッチリとつかんでいる。
「さ、もう行きましょう先生。七瀬先生はお忙しいんですからね」
「ええー!でもまだお話ししたい…」
「あんたもやることがあるでしょう!」
怒られ會下は泣きそうな顔をした。
「お騒がせしてすみませんでした」
眼鏡の男は深々と謝り、會下の腕を掴み引きずるようにして歩き出した。
「あああ七瀬先生また必ず!!!」
大声で叫びながら會下達は去っていった。
「カミエちゃんも大変そーやなぁ」
「びっくりしたぁ…會下先生って実在したんだ…」
嵐のように去っていった2人を見送りながらナナメは呆然と呟いた。
しかし、もっと威厳ある雰囲気かと思えば割と人も良さそうで
やっぱり大御所ともなると余裕レベルが桁違いなんだろうなぁと思うナナメであった。
「あの人は特殊やからなー。
てか七瀬さんマジできいつけなあかんよ!
すぐ目を離すとこれなんやからもー」
袖野は大袈裟にため息をついていて
世話がやけるみたいな言い方をされナナメは口を尖らせた。
「オレンジジュースは?」
「ああ…忘れとったわ…」
もぉー、と怒りながらもナナメは結局自分で取りに行くのであった。
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