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2-13 お荷物課

「んじゃお先しまー。愛しの嫁御が待ってるんで」 裾川はいつの間に帰り支度を済ませていて、 さっさと席を立って歩いていく。 「あ、待って待って裾川さん、オレもー!」 ミナミもバタバタと準備をして、お疲れっした!、と部活のような挨拶を残し 彼の後を追いかけていった。 2人いなくなっただけで部署は半数を失い、 また会話率の80%を占める彼らが抜けると急に静かになってしまう。 ヨコも仕事締めの作業を終わらせて、帰り支度を始めるが 雨咲は何か考えるようにパソコンの画面を見つめて止まっていた。 「……帰らないのか、雨咲」 一応また声をかけてやると、彼女はこちらをジロリと睨むように顔を向けてくる。 眼鏡の向こうの瞳は元々そういう鋭い形なのであろうが、 何か怒られるのではとついつい怯えてしまう自分もいた。 「…真壁課長」 「ん?」 「こういうのって、私のせいですよね」 雨咲はそう言いながら、真顔のまま目線を下へと向けた。 それを気にしていたのか、とヨコはため息を零した。

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