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2-14 お荷物課
「さぁな。でも別に誰も気にしてない。
お前はいつも自分が正しいと思ったことをやってるだけだろ?
だったら堂々としていればいい」
この部署ができる前、彼女とヨコは同じ部署にいたのだが
雨咲はまた例によって事件を起こし
同期や元々居た部署の面々からは相当嫌われているようだ。
どうやら彼女はそのせいで嫌がらせの如く仕事を押し付けられていると思っているらしい。
確かにそれも理由の一つではあるのかもしれないが、
それを言うのであればヨコは自分自身もそれに該当するとも思っていた。
ミナミもミナミで遅刻とサボり癖は一向に治らないし
裾川も仕事ができすぎる故の嫉妬と、
あのマイペースな性格に思う所のある人間はいるようで
つまり”お荷物課“という渾名は言い得て妙ということだ。
また押し黙ってしまった彼女に、ヨコは鞄を持って立ち上がり
彼女の元へわざわざ回り込んだ。
「あまり自分を責めるな、雨咲はよくやってるよ」
雨咲はこちらを見上げると、どこか泣きそうな目をしていて
普段は冷静沈着な彼女もやはり人間なのだと思ってしまう。
切りっぱなしの髪にノーメイクに近い状態で、
華やかさのカケラもない地味なスーツ姿だが
年頃の女性だし、本来ならばこんな仕事漬けの毎日よりももっと似合う場所があるのだろうに。
ヨコは彼女の頭を撫でてやった。
「それじゃ、お疲れ様。お前も早く帰れよ」
ヨコはそう言って、自分も帰路についた。
彼女は芯のある人間だ。
きっと自分で立ち直れるのだろうけど
少しぐらいは上司として褒めてやっても良いのではと思ったから。
こんなことが中間管理職として正しいのかはわからなかったが
とにかく全員よくやってることは間違い無くて、
裾川が言うように”我々このまま終わらない“と奮い立たせていたいものだ。
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