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2-25 単純かつ不穏な背景
休憩室を出ようとドアを開けると、
向こうに立っていた人影と身体がぶつかってしまう。
「うお」
「す、すみませ…」
雨咲は思わず反射で謝りながら顔を上げると、真壁が立っていて
その涼しげな目元に見下ろされている。
「なんだ雨咲か…気を付けろ?」
真壁はそう言いながらも呆れたように肩を竦めた。
その顔を呆然と見上げると、数秒前ぶつかった時に包まれた煙草の香りだとか
彼の身体の感触だとかが今更遅れてやってきて
雨咲は自分の顔が発火していく感覚を味わいながらその場から動けずにいた。
「……どうした?」
「あ、い、いえ…す、すみません……」
雨咲は声がひっくり返りそうになりながら謝り、ロボットのようにぎくしゃくとした動きで彼とすれ違いに休憩室を出た。
それ以降彼の方を振り返ることができず、
お疲れ様です、とだけ言い残して逃げるようにその場から走り去った。
頭の中が彼のことでいっぱいになって、爆発しそうだった。
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