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2-27 レッツゴー眠らない街
社会とか理不尽な仕事の忙しさを抜きにすれば
それなりに充実した生活だとは思う。
生活も満ち足りているし、恋人はいつも優しくて
ナナメは今、何もかも満たされていると自負していた。
だからといって苦悩がないわけではないのが人間の傲慢さだ。
「うう……」
パソコン画面の前で頭を抱えながら眉根を寄せる。
さっきから同じ所を何度も消しては書いてを繰り返していて
ほとんど作業を進められていなかったのだ。
「参ったなぁ…」
天才だなんだと一部で持て囃されども、0から1を産み出す作業に行き詰まることぐらいは誰にでもあるわけだ。
賞なんかを取ってしまったがゆえに次回作にも大いに期待がかかっていて
プレッシャーのようなものが無いかといえば嘘になる。
自信がない故にあまり気にしたことはなかったが、
さすがにこんな風に注目されてしまうと何だか色々と気にし出してしまうらしい。
袖野にも一応言える範囲で相談をして
期間を長く設けてもらってはいるものの、それも限りがあるもので。
「うーん…もうしょうがない、今日は一旦閉店!」
とはいえ、こういう時無理矢理やっても意味がない。
ナナメは潔くそう決めて、パソコンの電源を落とす作業に入った。
「ネタ収集にでも行くかなぁ…」
ぼんやりと思いついたことを口に出し、パソコンが処理を行っている間少しだけ目を閉じて考えた。
ここ最近忙しかったし、なんだか雑談的なことをやってない気がする。
打ち合わせでは業務内容ばっかりだし
ヨコとはもちろん他愛のない話はするのだが、ほとんどいつも一方的に自分が喋っているし。
ジャージのポケットに手を突っ込み携帯端末を取り出した。
時刻は夕方16時を指していて、とはいえヨコさん帰ってくるしなぁ、と微妙な時間に悩んでいると
ちょうどメッセージを受信したことを知らされる。
開いてみるとヨコから、会議が入った遅くなる、的な連絡で
ナナメは寂しさを感じると同時にこれは思し召しでは?と思い至る。
「えーと、お疲れ様です、わかりました…と」
メッセージを返し、よし!、と立ち上がる。
アウトプットのためにはインプットも必要だ。
他人の話からヒントを得られることはあるに違いない。
とにかく今の自分は外の世界に行くには酷すぎる状態なので、
格好を整えるべく洗面所に駆け込むのであった。
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