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2-29 レッツゴー眠らない街

住宅街を抜け駅の方に歩いて行くその背中を一定の距離を保ちつつ尾行する。 アウターを着ていてもその線の細さが分かり、女性の中でもやや高めの身長も相まって “ミスコン”と言われていたことを思い出してしまう。 色々と考えると挫けそうだったので 雨咲は肩にかけていた仕事用のトートバッグを握り締めながら、 今はただ尾行に集中することにした。 駅に辿り着くと、颯爽と改札を抜けていく後ろ姿に雨咲も続いた。 一体こんな時間にどこへいくというのだろうか。 段々とその行動に疑問を持ってしまう。 彼女の乗った電車に自分も飛び乗り、 同じ車両の1番離れたところに立ってその姿を伺った。 ドアの所に立って手すりを掴みながら携帯端末に目を落としているその姿に ようやくしっかり顔が確認できる。 長い睫毛に物憂げな瞳、通った鼻筋、形のいい唇。 残念ながら、とても美人なその存在に雨咲は唇を噛みながらじっとその顔を睨んでいた。 確かに、真壁と彼女が並んでいたら相当なお似合いカップルなのかもしれない。 でもそんなのは見てくれだけで、人間肝心なのは中身じゃないか、と 雨咲は必死にその存在の粗を探そうとしていた。 電車に暫く揺られ、何駅か通過してやっと彼女はとある駅で降りて行った。 雨咲も慌てて後を追い、あまり降りたことのないその駅に戸惑いながらもその背中を必死で追いかけた。 迷路のような駅構内を迷いなく歩いていくその後ろ姿は頼もしさすらあった。 「え…ここって……」 改札を抜けて、目の前に広がる街の風景に雨咲は急に嫌な予感に苛まれた。 すっかりと暗くなってしまった世界に反発するようにギラギラとネオンが輝き、 そこに取り込まれるように吸い込まれていく人間達。 今まで生きてきた中で雨咲がほとんど足を踏み入れたことのない土地であった。 しかし雨咲が戸惑っている最中にもその背中は さっさとその怪しげな世界へ歩いていってしまう。 ぼうっとしていると見失いそうなその存在を、雨咲は決死の思いで追いかけることにした。

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