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2-31 レッツゴー眠らない街

「ねえいいじゃん、そんな怖がらないでよ」 男は腕を引っ張って雨咲の身体を引き寄せて、肩に手を回してくる。 香水と煙草と酒の混じった嫌な匂いがして、 心底身体ががくがくと震えるのを感じ目をぎゅっと閉じる。 「やめ…」 「何してるんですか?」 急に飛び込んできた声に、雨咲は怯えながらも顔を上げた。 「怖がってるじゃないですか、離しなさい」 ギラギラといやらしく輝くネオンの光は、その白い肌と輝く瞳に映るとやけに美しく見えていて 雨咲は女神が現れたと思いながらも呆然とその姿を見つめてしまった。 しかし次の瞬間、その存在が自分が先程まで尾行していた人物だと思い出し 思わず俯く。 男は雨咲の体を突き飛ばすように慌てて離した。 「お、お姉さん…どこのお店の人?」 「……は?」 「め、名刺ある?俺する、指名するよ!?」 「結構、間に合ってます。 ほら行きますよ」 男を押し退けながら彼女は雨咲の背中を優しく押してくる。 雨咲は押されるままに歩き出した。 「お願いお願い、名前だけでも教えて!」 しかし男はついてきて、彼女の前に立ちはだかった。 「俺お姉さんにマジで惚れちゃったかも!」 彼女は一向に退こうとしない男の胸ぐらを掴みかかった。 てっきり殴り倒すのかと雨咲は思わず口元を抑えた。 「そんなに会いたいんなら、自分で探してもらえます? そんぐらいの根性見せてから言いな」 彼女はキスをするのではというくらい顔を男に近付けてメンチを切った後、 胸ぐらから手を離しまた雨咲の背中を押してくる。 男はふらふらと後退り、やがて地面にへたりこんでいた。 「さ、さ、さがしま〜す!!!」 大声で叫ぶ男の声を背中に、 呆れたようにため息をこぼしているその美しい顔を盗み見て 助かったと安心すると同時に、まずいことになった、と焦り始める。 とはいえ流石に尾行はバレていないとは思うが接触してしまうとは誤算であった。

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