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2-36 レッツゴー眠らない街

自分もかつてはこんな風に必死に戦っていたんだろうか。 他人の目など気にならないくらい、誰かのことを必死に考えて 争って、やがて、何もかも本当に無くなってしまったように絶望して。 そんな姿は可哀想、だけれど。 美しくも見えた。 「そっか。月並みなことしか言えないけど あなたは何にもない、では無いですよ。 一生懸命誰かを愛せる心を持っているし、 それにれいみさん結構可愛いらしいと思いますよ」 ナナメはそう言いながらも自分の顔を指差し、その指をくるくると回した。 彼女は泣きながら、こちらを睨んでくる。 「あ、あなたのような綺麗な人に言われても、説得力ないんですけど…」 「ええ?そうですか…?ただの30のおじさんなんですけど…」 「おじさん……?」 礼美は目を細めて、ナナメに顔を近付けてくる。 そんな風にされると確かにちょっと目付きが怖い気がするが、そこも結構可愛げがある気がして。 「とにかく、もっと自信を持ってください 大事にしてくれる人がきっといつか現れますよ」 「そうでしょうか…私には彼しかいないように思います… こんな私に優しくしてくれる人なんて…」 ぐすぐすと鼻を啜る彼女に、ナナメは肩を竦めた。 自分は幸いにも叶えることができたけど、本当に叶わない時はどうしたら良いんだろう。 最初から可能性なんて0なのが分かりきっていて、それでも止められなくて。 ナナメはついつい嫌な記憶を呼び起こしてしまって、苦笑した。 「…俺のような汚い人間には あなたのその純粋な気持ちを掬ってあげられないけど… なんていうか、あなたがちょっと羨ましいかな…」 自分で口に出しておきながら、ナナメはハッとなった。 彼女の泣きじゃくる顔を見ると、胸がザワザワとして 辛くて苦しくて、…それで。 絶望していた方が仕事がうまくいく。 なんとなく気付いてはいたけれど、確信するとどうにもやりきれない。 それでも“そんなもの”は普通の人間には関係のないことだった。 普通の人間はただ幸せになりたいだけだし、 幸せになるならなっただけ良いのだから。 そう思うと、自分は“幸せにはなっていけない人間”なのかもしれない。 だけれどもしもヨコが自分の傍を離れて行ったらと思うと、 それこそ死んでしまうくらいには何にもできなくなるに違いないのだ。

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