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2-38 お説教ですね。

結局本来の目的は果たせなかったものの、 尾行女との食事という、したくてもできないなかなかに興味深い体験ができたと思うことにして 焼肉店を出ると彼女と共に駅に向かった。 追加の肉とデザートのパフェまで食して満足したのか、 彼女はいくらか大人しくなって黙ってついてきた。 家は同じ方向の電車で帰れるようだったし 心配なのでそこまで一緒に帰ることにした。 「あの…ご馳走様でした……」 ホームで電車を待っていると、少し後ろに立っていた礼美がおずおずと呟いた。 「いえいえ。でも、もう尾行はやめてくださいね 俺以外にも、ですよ?」 結局彼女の目的はよく分からないままだったが、 色々とうまくいっていないようだし何かむしゃくしゃしてしまったのだろうと思うことにした。 「すみませんでした…」 焼肉のおかげかいくらか彼女は冷静に戻れているらしく、どこかしゅんとなって謝られ ナナメは微笑みを浮かべ頷いておいた。 電車がやってきて、2人は一緒に乗り込んだ。 少し遅い時間とはいえ、乗客はそこそこだった。 ナナメは礼美を空いていた端の座席に座らせ、自分はその傍らに立つ事にした。 「ナナメさんは…どうして私に優しくしてくれたんですか…」 電車に揺られながら、礼美は自分の手元を見つめ呟いている。 優しいのかどうかは分からない、寧ろ芸の肥やしとして見ていた部分もあって それは本当に申し訳なくも思うのだが。 「うーん、まぁ。どうしようもないことでも 人に話したらスッキリする事もありますから 俺も昔、よくいろんな人に話聞いてもらってましたし 人を頼るのも大事な事じゃないですか」 自分もなかなかに引きこもりのくせに偉そうに受け売りの説教を零すと 彼女は、そうですか…、と大人しく頷いていた。

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