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2-41 お説教ですね。

一体なんだというのだろう。 急に会議に招集されるし つまらない話で残業を余儀なくされるし ナナメと雨咲の関係もよく分からないし とにかく今、自分がどうなっているのかもよく分からないし。 ヨコは自由の効かない肢体と、持て余す熱に唇を噛んで必死に耐えていた。 家に着くや否やベッドに引き摺られ、抵抗する間も無く衣服を剥ぎ取られ 両手首を重ねられてネクタイで縛られてしまった。 あんまりふざけすぎないようにと抵抗したかったのだが、 どこで心得たのか絶対に解けない結び方をされているらしく どれだけ力を入れても拘束が解けない。 「おい…、ナナメ…っ、なんなんだ一体」 彼はヨコを下着一枚にしたものの腕と脚を組んでベッドに優雅に腰掛けたまま何かを考えているようだった。 静かに目を閉じるその横顔はいつも通り美しかったのだが、 謎のシチュエーションとはいえ身体が勝手に期待しているらしく ざわざわと身体の表面に熱が走ってもどかしかった。 「ちょっと黙っててもらえます?色々と考えたいことがあるので」 「考えるのは自由だがこれを解いてからにしろ!」 「ダメですよ、だってヨコさん逃げちゃうでしょ せっかく捕まえたんですから」 完全に油断しきっていたとはいえこんな事になるとは。 ナナメはこちらを見ると、ふ、と目を細めて微笑んだ。 「大人しく捕まっちゃうヨコさんも悪いんですよ?」 ナナメはベッドを這うようにこちらへやってくると、ヨコの身体をつう、と撫でた。 彼の少し冷たい指が胸の真ん中を通っていき、 その絶妙な力加減に勝手に身体が反応してしまう。 「いいですかヨコさん、あなたは確かに優しいけど それを誰彼と分け隔てなく振りまいているのはよろしくありません」 「振りまいてるつもりはないんだが…」 そもそも優しいとは真反対にいると自分では思っているのだが ナナメは片眉を上げている。 彼は手の甲で身体を撫でてきて、ただでさえ彼に触られているという事実だけでおかしくなりそうなのに ぞわぞわとした感覚と、無表情にこちらを見下ろす彼の美しい顔に ヨコは思わず居た堪れなくなって顔を背けた。 「ほら、すぐそういう可愛い顔するでしょ」 ナナメはありえないことを呟いているのだが、ヨコは変な声が出そうで奥歯を噛み締めていた。

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