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2-52 側にいたい人

罪滅ぼしというわけではないが、 若干の罪悪感でのこのこと卵を買い込んで帰る自分を恋人は呆れるだろうか。 多分何事も無かったかのように、わーい、と喜ぶことだろうけど。 家に帰ると相変わらずナナメは自室に引きこもっているのか姿が見えなかった。 キッチンが妙に片付いていて、 気になっていたシンクの汚れが見当たらずピカピカになっていた。 彼は生活能力が皆無で基本的にだらしなく過ごしている割に、 謎に部屋の掃除などには抜かりない。 とはいえ異常なまでに美しく磨かれた鍋を眺めながら 何か忘れたいことでもあるのだろうか、と思うとまたジワジワと罪悪感に苛まれるのであった。 しかし落ち込んでいてもしょうがないのでいつも通りに夕食の準備に取り掛かっていると 雑に髪を纏め、ジャージは腕まくりをし ダサいの極みのような格好のナナメが現れた。 「あ、おかえりなさいヨコさん」 「…ただいま ……鍋、洗ってくれてありがとうな」 「え?ああ…いえいえ」 ナナメは不思議そうに首を傾けた後、困ったように微笑んでいて どうかしたかと聞きたいような、 しかしあまり踏み込んではいけないのかもしれないと葛藤してしまう。 雨咲のこともあるし。 ヨコがぐるぐる考えながらも手を動かしていると、 いつの間にかカウンターの向こう側に来ていたナナメにジッと見つめられていて 眉根を寄せる。 何か言いたげでもなくただただ観察するようなその目線には妙にそわそわしてしまうものだ。 「……何だ…?」 「んー…ヨコさんのこと見てたいなぁって… だめですか…?」 ナナメは妙にしおらしく呟いていて、そんな顔をされるとダメだとは言い辛かったが 何が楽しくて見たいというのか、全くの謎だった。 「…見てて面白いか…?」 「面白いというか…ヨコさんだなぁって」 「そんなの当たり前だろ…」 相変わらず意味不明な思考らしいが、 ヨコはため息を零して諦めることにした。 雨咲の件でなくても、ここ暫くはあまり一緒に過ごせていなかったし 彼は彼で何か忙しくしているようだったから 何か考えることもあるのだろう。 自分がどうこうできる話ではないのだが 繊細な商売なのだろうということはなんとなく分かる。 ゆえに自分が負担をかけているのであれば申し訳ない話なのだが。

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