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2-53 側にいたい人
卵を溶き混ぜながら、
どうしても気になってちらりと彼を見ると
ナナメは人形のように無表情にこちらを見つめている。
「……居なくなったりしないから」
ヨコがそう言うと、ナナメは瞬きをぱちぱちとして
やがてへにゃりと微笑んだ。
その幸せそうな顔に、
いつもいつも、救われてるのは俺なんだよなと思う他ない。
「ナナメ」
ヨコは仕方なく手を止めて、カウンターの向こうに腕を伸ばした。
彼の頬を撫でると、ナナメはくすぐったそうに肩を竦めてくすくすと笑う。
カウンターから身を乗り出して、彼の額に口付けた。
「愛してる」
ただただ純粋に、そんな風に伝えたくなってしまう。
伝えさせてもらえたなら、自分はどんな理不尽にだって耐えて
ここにまた戻って来れる。
そんな気にさえなってしまうから。
「ヨコさん…そんなんで俺の機嫌が治ると思ってるんですか?」
「…う…すまん…」
「ふふ、なんちゃってー
最初から機嫌悪くなんてないですう」
そう言いながら確かにどこか機嫌が良さそうに微笑んでいて
彼には一生勝てないのだろうなぁなどと思うのであった。
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