121 / 121

2-53 側にいたい人

卵を溶き混ぜながら、 どうしても気になってちらりと彼を見ると ナナメは人形のように無表情にこちらを見つめている。 「……居なくなったりしないから」 ヨコがそう言うと、ナナメは瞬きをぱちぱちとして やがてへにゃりと微笑んだ。 その幸せそうな顔に、 いつもいつも、救われてるのは俺なんだよなと思う他ない。 「ナナメ」 ヨコは仕方なく手を止めて、カウンターの向こうに腕を伸ばした。 彼の頬を撫でると、ナナメはくすぐったそうに肩を竦めてくすくすと笑う。 カウンターから身を乗り出して、彼の額に口付けた。 「愛してる」 ただただ純粋に、そんな風に伝えたくなってしまう。 伝えさせてもらえたなら、自分はどんな理不尽にだって耐えて ここにまた戻って来れる。 そんな気にさえなってしまうから。 「ヨコさん…そんなんで俺の機嫌が治ると思ってるんですか?」 「…う…すまん…」 「ふふ、なんちゃってー 最初から機嫌悪くなんてないですう」 そう言いながら確かにどこか機嫌が良さそうに微笑んでいて 彼には一生勝てないのだろうなぁなどと思うのであった。 ..........Next

ともだちにシェアしよう!