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3-2 あなたの隣
彼との関係は、同居人…
というより端的に言ってしまえば、多分セフレである。
記憶は曖昧だったが、
あまりにも酷い裏切りの末、精神崩壊の寸前で彼に慰められ、気付けば身体を重ねてしまった。
その時は彼が男だとかいうのも意識できないほどヨコは壊れていたのだが、未だに後悔という海も押し寄せてはきていないので不思議なものでもあった。
「あの…俺…そのえっと…」
背後に彼の不安げな声がぶつかった。
ヨコは彼が作りかけていた妙なものを味見して不可解さに眉根を寄せながらも、謝らないでください、とコメントする。
家に居候している代わりにとヨコは彼が苦手な料理を引き受けていたので、これくらいはやらせて欲しくもあったし。
「…怒ってますか?」
「は?」
謎の質問をされ、彼を振り返るといつの間にか服の裾を掴まれていて
不安げな表情で見上げられている。
なぜか一瞬思考が停止し、その泣きそうな顔から目が離せなかった。
「……ごめんなさい…」
一体何に謝っているというのか。
ヨコは問い詰めたかったのだが瞼を擦りながら、洗濯してきますね…!と微笑んで去って行ってしまった彼の後ろ姿についに何も言えなかった。
なんでドキッとしたんだろう。
ヨコは不可思議さの正体を追えず、仕方なく朝食の準備に取り掛かったのだった。
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