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3-9 悩める官能小説家

色々あったものの、多分平穏に暮らせていると思う。 確かに仕事は相変わらず理不尽で不毛なことばかりだし、 ナナメに怒られて以来女子社員からのボディタッチを避けることに神経を使ったりもして疲弊しているものの 晩飯はどうしようとか考えたりする時間は普通に幸せに感じるし 家に帰ればそれを待っている恋人がいる事も、帰宅の足取りを軽くしてくれる。 珍しく残業も少なく程よい時間に帰宅できることとなったヨコは 頭の中のスーパーマーケットで買い物のシミュレーションをしながら駅に向かっていた。 駅まで来ると時間帯的にスーツ姿の人間が多く見受けられた。 改札を目指して歩いていると、構内の柱の前に背の高い男が立っていて 行き交う人々より頭ひとつ抜けたその姿はつい目に留まってしまう。 「お、真壁さんやん」 向こうから先に声をかけられ、ヨコは彼へ近付いた。 「袖野さん、どうも」 軽く会釈すると、男は人当たりの良さそうな笑顔を浮かべる。 ナナメの担当編集でもあり部下のミナミの件もあり 彼には二重に世話になっているため素通りなど出来るはずもない。 「今帰りですか」 「ええ、まあ…」 「そっかーじゃあそろそろ来るかな?ミナミくん」 「…あいつ俺より先に飛び出して行ったはずですが…」 「ええ…?また変なのに捕まっとらんとええけど…」 案の定ミナミと待ち合わせをしているらしい彼に ヨコは何故だか申し訳なく感じてしまうのだった。

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