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3-11 悩める官能小説家
「ほくとさーーーん!」
人混みから異様にテンションの高い男が飛び出してきて
2人は同時にそちらを見た。
相変わらずよれよれスーツ姿の男、ミナミが小学生のように手を振りながらこちらに駆けてきては
袖野の前で急ブレーキを掛けた。
「お待たせしました!」
全力疾走でもして来たらしく息を弾ませながら、目を輝かせているミナミに
いつもそれぐらい生き生きしてくれればなぁと思うヨコであった。
「すみません、遅くなっちゃって」
「なんかまた巻き込まれてへんか?大丈夫か?」
「大丈夫です!
タキシード着たカピパラが走って来て
めちゃくちゃ追いかけたかったけどスルーして来ました!」
「おし。偉いでミナミくん」
ミナミの意味不明な発言を袖野は華麗に対処している。
頭を撫でられてミナミは大層ご機嫌そうだ。
「…じゃあ俺はこの辺で。
色々とご迷惑かけてるかもしれませんが…」
「ああ、いやいや気にせんといて
うちとしても七瀬さんは手放せん人材やから」
「いやこいつも…」
ヨコは犬のように袖野を見上げてキラキラしているミナミを指差しながら苦笑した。
袖野は、あー、と言いながらも変な笑顔を浮かべている。
「…あれ?課長なんでいるんすか?」
「今頃かい!」
「……お前ちゃんと袖野さんの言うこと聞けよ?」
「勿論です!」
ミナミはビシッと背筋を伸ばして胸を張り、
俺の言う事も聞いてくれればなぁと思うヨコであった。
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