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3-13 悩める官能小説家
「そうか…?出来ないこともあるぞ、普通に」
「たとえば?」
「………力加減とか…」
「力加減???」
「いや…その……
少なくとも俺はお前がやってるようなことはできない
想像もつかんというか…」
以前にも彼はそうやって、普通にすごい、と褒めてくれた。
素直に嬉しくはあるが、本来する必要はないことだしなぁと卑屈に思ったりもする。
「うーん…でも、俺1人でやってるわけじゃないんです。
結局仕事でも俺に出来ないことを誰かがやってくれてるわけで…
本当に、出来ないことの方が多くって」
大人になれば自然と自分の足だけで立てると思っていた。
だけれど実際はそうもいかない。
それでも甘えさせてくれる人たちがいるから、むしろ歳を追うごとに開き直っていくような感覚さえあった。
「お陰で人のありがたさが身に沁みます」
ナナメは肩を竦めながらも、その素晴らしいカボチャの煮付けを口に運ぶのであった。
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