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3-14 悩める官能小説家
なにも出来ない俺の側にいてくれてありがとう、
とナナメは言う。
彼の自信の無さは今に始まった事ではなかったが、
最近はますますそれが顕著な気がした。
ヨコは煙草に火を付けながら、ベランダの手すりに背を預けて家を振り返った。
もう少し作業をすると言ってまた引きこもってしまったナナメの部屋の窓が見える。
カーテンの隙間から僅かに漏れる光を見つめながら、煙を吐き出す。
「…お前にしか出来ないことの方が多い気がするけど」
人間は確かに得意不得意があるだろうし出来ることを得意な人間が担っていてもいいとは思うけど
代わりの効かない存在である彼はそうも言ってられないのだろう。
仕事の事ではなにも出来ず、してやれる範囲でしか補えない事を歯痒く思ってさえいる。
自分が人生で一番最低だった時、彼が一番近くにいてくれた。
その事は時が経つにつれて、自分が大丈夫になるにつれて
どんどんと有り難みを増しているような気がした。
「……分かってんのかなぁ…」
あの時見放さずに居てくれたから、
俺はここに居られているんだけど。
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