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3-17 レッツゴー乙女チック!
「…何やってるんだろ私」
灯りが灯るお家の中では、あの綺麗な彼女と2人でいるのだろうか。
何を話してるんだろう?
結婚、するんだろうなぁ、きっと。
また想像しようとして首を振る。
ここへ来てもどうにかなるわけでもない。
諦めきれなくたって、こんな犯罪めいたストーカー紛いの事はいい加減やめるべきなのだ。
もう絶対ここへはこない。今日で最後にする。
さようなら、さようなら真壁課長…明日会社で会うけど…。
雨咲は目を閉じたまま家に背を向け、一歩足を踏み出した。
「…れいみさん?」
不意に声が聞こえ雨咲は目を開けた。
目の前に、ナナメが立っていた。
「えっ!?あっ、その、私…」
心臓が飛び跳ね、思わず大声を出してしまった。
慌てて口を開くが言い訳が思いつかない。
警察を呼ばれるかもしれない。
雨咲は後ずさり電柱に背をぶつけた。
「もう。また来ちゃったんですか?
あなたって子はイケナイ子ですね…」
ナナメは困ったようにため息を零し、イケナイ子!?と雨咲は顔が熱くなるのを感じた。
「ち、違います…私、ここへ来るのは、最後にしようと思って…
真壁課長にもはっきりと…フラれて……」
自分で言いながらもじわっと涙がまた込み上げてくる。
そう、私じゃダメなんだ。あの人の側にいる資格はない。
そんなこと嫌というほど分かりきっているはずなのに。
「れいみさん…知らなかったとはいえ
あなたの気持ちを考えずに、無責任なことばかり言ってしまったのかもしれません…」
ナナメは雨咲を覗き込むように膝を曲げて顔を近付けてくる。
その美しい顔にも、優しい言葉にも雨咲は心底自分が恥ずかしくなって目を逸らした。
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