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3-20 レッツゴー乙女チック!

ピンク色の壁を背景に、鏡の中の自分は塗ったことのない薄紫色のアイシャドウで瞼を光らせていて 成人式以来の真っ赤な唇をした様は自分が自分ではないようだった。 可愛いかもしれない。 いや絶対似合ってないはずだ。 相反する気持ちを抱きながらも、何故かドキドキしてしまって 雨咲は鏡の中の見知らぬ女を見つめていた。 「ほらね、いいじゃない?」 隣から野太い声が聞こえてきて、雨咲はその言葉にそんなような気がしてしまうのだった。 「なんかケバくないですか?もっと森がぁるみたいなのがいい気が…」 「ナナメちゃんは黙ってて!」 向かいの席でナナメは怒られて肩を竦めている。 雨咲は再びあの恐ろしい街に連行され、更に怪しいビルの奥の奥へと引き摺られ 怖い人たちに売り捌かれるのかとでも思ったのだが ピンクの壁に囲まれ、キュートなシャンデリアがぶら下がり ユニコーンやらハートバルーンやらが敷き詰められた乙女チック全開な空間にぶち込まれてしまったのだった。 雨咲は、やたらと身長が高く露出も高く ばっちりばちばちの顔面のこの店の従業員によって 良く分からないまま化粧を施されてしまっていた。 「確かに素材がいいかも〜! さっすがナナメちゃんが連れてきただけのことあるう」 ボックス席で雨咲の隣に座っていた従業員は、ピンク色のラメが散りばめられたドレスに身を包んでいて 動くたびにキラキラ光っていた。 金色の髪とやたらと長いまつ毛は、確かに美しかったがその野太い声で脳をバグらせてくる。

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