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3-21 レッツゴー乙女チック!

「何より若いってのがね…」 ナナメにやたらとくっついていて座っている黒髪の従業員は、 谷間ががっつりと見える水色のドレスに身を包んでいた。 端正な顔立ちとすらっと長い手足は、本当に同じ人間かと思うほどである。 「ええ本当に。羨ましい限りで」 ナナメはピンク色の飲み物を飲みながら、苦笑している。 「ナナメちゃんもJKに見えるわよ」 「はいはい…」 「わ、私には、か…格好良く見えてるから…ね?」 黒髪の従業員はどこか頬を染めながら、嫌そうに目を細めているナナメの顔を覗き込んでいる。 「ねえねえせっかくだからこういうの着てみない?」 金髪の従業員は自分が着ているドレスを引っ張って見せて 雨咲は思わず飛び上がってしまう。 「そ、そんな無理ですよ…!」 「えー?いいじゃない!可愛いと思うんだけどぉ?」 生まれてこの方モノトーンカラー以外の服を着た試しがない雨咲は必死で頭を横に振った。 「しずかの服貸してあげなさいよ」 「うーん私のは少し大きいんじゃないかなぁ… あ、でもあのピンクのやつとかだったらいいかも…?」 「あーアレね!いいんじゃない!?」 2人はキャッキャとはしゃいで喋っていて、その女子の会話はキラキラと光ってみえた。 自分には縁遠い世界だと思っていたし、こんな乙女空間にいる事事態未だに夢のようなのに。 「れいみちゃん、普段どんな服を着てるの?」 黒髪の従業員に聞かれて、雨咲はその綺麗な顔に眉根を寄せた。 「どんなって…ふつうです…あんまり出かけないし…」 「そうなのぉ?もったいなーい!」 金髪の従業員の喋り方は会社にいる一軍女子達に似ていたが その声も相まってか不思議と可愛く思えてしまう雨咲であった。 「じゃあやっぱり着ましょうよ!」 「そうですよ。物は試しというか。 まあ俺はもうちょっと清楚な方がいいかなと思うんですが…」 「わ、私清楚系でしょ?」 「え?対極では…」 「清楚系だもん!」 ナナメは黒髪に抱き付かれて、離れなさいってば、と怒っている。

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