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3-24 あめあらし。
しずかはこちらにやってくると、雨咲を抱き締めてくれた。
「ご、ごめんね、私自分のことばっかり考えてて
あなたに嫌なこと聞いちゃった…!」
「いえ…私こそ、ごめんなさい…突然こんな話…」
「…こんな可愛い子まで泣かせるなんて…本当にそいつなんなの…?」
しずかはボソッと低い声で呟きながらも雨咲の頭を撫でてくれた。
その豊満な胸は自分にもあるものだし、相手のは作り物とわかっていながらもちょっとドキドキしてしまう。
「でもね、れいみちゃん、私応援するから」
「え?」
しずかは身体を離すと、雨咲の頬を両手で包んで撫でてくれる。
ちょっとキツい涼やかな目元に長い睫毛、宝石のように澄んだ瞳にじっと見つめられて
雨咲はまた更にドキドキしてしまった。
「ほんっとうに諦めきれなかったら、奪っちゃえばいいのよ!
ナナメさんは敵に塩を送っちゃったって後悔すればいいんだ」
「へ…?ええ…?」
「その隙に私も奪えるように頑張るから…!」
2人で奪っちゃいましょ!とどこか本気の眼で訴えてくるしずかに
雨咲は泣きながらも笑みを浮かべた。
「しずかさん…ナナメさんのこと好きなんですね…?」
元々男性なのに今は女性で女性が好きで…と混乱しそうだったが
今まで恋愛沙汰になんて一切関わってこなかったとはいえ、そういう偏見ももうどうでもいい気がした。
そんなことよりもただただ、いい人だな、とそんな風に考えてしまうのだ。
今日初めて会ったばかりの自分を励まそうとしてくれて。
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