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3-26 あめあらし。
泣いて笑って結局ぐちゃぐちゃになってしまった顔を、一度メイク落としで綺麗にしてもらい
しずかに改めて化粧をしてもらった。
「うん。さっきのも悪くなかったけど
やっぱりこっちの方が似合うかも?」
薄いピンクのアイシャドウに、サーモンピンクの口紅。
先程のキレキレのできる女感な色遣いからどこか可愛らしいカラーで統一された化粧に
雨咲は思わず鏡に顔を近付けた。
「あ、さよさんには内緒だよ」
しずかはそんな風にイタズラっぽく笑っていて、雨咲は顔の角度を変えながらも
化粧一つでこんなに印象が変わるものなのか、と妙に感心してしまうのだった。
「ありがとうございます…しずかさん
私、…化粧なんてまともにしたことなくて…
こんなので恋愛しようとしてたなんて…」
「本当は見た目なんてどうだっていいのよ。
自分が好きかどうか、でしょ」
「好きかどうか…」
「そ。相手よりもまず自分。
自分に嘘ついて好きになってもらっても意味ないじゃない?」
彼女は全身で説得力で、雨咲はぐだぐだ言ってる自分がどこか恥ずかしくもなるのだった。
「でも、何が好きかはやってみないと分かんないでしょ?」
彼女はそう言ってピンク色のワンピースを広げて見せた。
フリルがあしらわれたワンピースは、露出はあまり無かったがお姫様のお洋服のようで
そんなものの存在にすら今まで自分とは関係ないと思っていた雨咲は幾らか億劫になるのだが。
「……私、着てみます」
「そう!その調子よ!」
そんな風に応援してもらえるともうなんだってやってやらぁという感じだった。
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