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3-29 美しい横顔
「あら、いいじゃない」
「きゃー!可愛い!可愛いわよぉ!」
しずかの後ろからおずおずとこちらへ歩いてきた礼美は、どこか恥ずかしそうに俯いていた。
てっきりド派手で大露出な痴女コーデをさせられているかと思いきや
露出も少なくフリルをあしらった上品なワンピースに
先程と化粧も変えたのか、全体的に甘めな色使いだ。
スーツ姿の時とはかなり印象が違って見えて、女は本当に化ける生き物らしい、と感心してしまうナナメであった。
「どう?どう?可愛いでしょ?」
しずかは何故か誇らしげに礼美の背中を押して自慢していて
礼美は怖々とこちらを見上げて、ど…どうでしょうか…?と聞いてくる。
ナナメは彼女の方に身体を向けた。
「良いんじゃないですか?」
「変…じゃない…?」
「ていうか、ずっとそう言ってるじゃないですか
あなたは可愛いらしいって。
もっと自信を持ちなさい」
礼美はどこか泣きそうな目で見つめてくるので、その自信なさげな顔を覗き込むようにして微笑んだ。
「とっても、素敵ですよ?」
本当に。それで我が恋人に迫ろうものならいかがだろうか。
それでも、才能など関係のない場所で
なんの葛藤もなくひたすら幸せになるルートを歩いていい彼女に対しては
本当にそうなってくれれば良いのにと思ってしまうのだ。
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