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3-31 美しい横顔
そのワンピースあげるから着て帰って、としずかに言われてしまい
雨咲は押されるままにそうすることにした。
更に化粧品のいくつかを譲ってくれて、今度一緒に買い物に行こう、と約束までしてしまった。
なんだか友達が出来たようで雨咲はふわふわしながらも、
初めて化粧を施しピンク色の服で街を闊歩するのは新鮮でドキドキだった。
しかも男性と一緒に、なんて。
「はぁ…」
ナナメはどこか疲弊したようにため息を吐きながら歩いていて、
雨咲は彼を見上げては、確かによく見ると男だ…、と思ったりした。
「ナナメさん…あの、ありがとうございました
普通に生きてたら絶対できない体験でした」
色々と衝撃だったとはいえ、共感してくれる人にも出会えて
少しだけ自分の事を許してあげられそうな気がしていた。
ナナメは困ったように微笑んだ。
「ヨコさんには内緒ですよ?
俺がこんなとこ連れてきたなんてバレたらきっと怒られちゃいます」
そんなことを言う彼に、ああいう人、と揶揄していたしずかの言葉が蘇った。
「なんで…ナナメさんは私によくしてくださるんですか?」
「またそれですか…?
うーん、そうしたいからというかなんというか…難しいなぁ」
ナナメは腕を組みながら唸っていて、本当に特に計算などしていないのだろうな、と思う。
「おかしな人ですね、ナナメさんって」
「あー…あなたまで俺をそうやってバカにするんですね…」
いいもんおかしくて、とナナメはどこか拗ねたように口を尖らせていて
その子どもっぽい所作に雨咲は思わず笑ってしまった。
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