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3-34 俺のせいなのか?
「……あいつと、なんかあったのか…?」
昨日彼は出掛けていたようだったが、まさかまた彼女は尾けたりしたのだろうか。
雨咲はもうパソコンの画面に向かっていて、肩を竦めながらこちらを見ようとはしなかった。
「内緒にするように言われておりますので」
彼女のその言い草には、何かはあったらしい、ということが裏付けられてしまって
ヨコはモヤァっとした気持ちが沸き起こってきてしまう。
殴り合いの喧嘩なんかをした様子はないようだが、
そもそもナナメもあんな風にはしているが一応男である。
彼の今までの恋愛遍歴もよくは知らないし、自分と同じく男性未経験というわけではなさそうだったものの
きっと女性との恋愛の方が多かったのではないのだろうか。
それ故の“官能小説家”なのだろうし。
そういえば、彼は何故自分のことが好きなのだろう。
「…はよーっす」
「ミナミさんまた遅刻です」
「ちゃんと間に合うように家出たんだよ?
けどおばあちゃん5人に捕まっちゃってさぁ」
「どういう言い訳ですか?」
ミナミが現れたおかげでそれ以上言及できなくなってしまったヨコは、モヤモヤしながらも仕方なく仕事を開始する。
「あれ?てかあめちゃんメイクしてる…?」
「…煩いですね。どうでもいいでしょ」
「いやいや似合うじゃんって話!」
そういうところは目敏いミナミに、雨咲は相変わらずつんけんと返していたが
いつもよりどこか機嫌の良さそうに見える彼女にヨコはますます眉間の皺を深くさせていった。
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