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3-39 やるべきこと

「確かにベースは官能小説ではありますが、 繊細な描写や切ない心情の表現は、女性受けもする内容だと思うんですよ。共感できるというか」 霧島は仕事のできる女性といった感じでハキハキと喋ってくれて その謎の説得力は袖野にも通じるものがある。 仕事のできる人はみんなこんな感じで謎に誉めてくれるなぁとナナメは他人事のように考えてしまうのだった。 「最近は女性向けでも、ちょっと過激な内容のドラマや映画の方が多いですし それに、受賞作のお墨付きですからこちらとしても売り込みやすいんですよ」 「なるほど…?」 よくわからないなりに相槌を打つと、袖野にはそれが分かったのか苦笑している。 「ま、とにかく色々含めて改めて出し直しますよーってことやな。 また詳細は文芸の方の担当者と詰めていきましょ」 「わかりました。…よろしくお願いします」 少しだけ今後のスケジュールなどについての説明をすると、霧島は部屋を去っていった。 2人きりになると袖野はニヤニヤしながらナナメに顔を近付けてくる。 「七瀬さんについに社運かけ始めたで」 「冗談……」 「いやマジでマジで」 袖野はおもしろそうに笑っていて、ナナメは冗談でも恐ろしいと肩を竦める。 「特選の希望の光が本当にスターになってしもうて…編集長も鼻高々やで」 「袖野さんのおかげなのに…」 「マジでそれ他の人に言わんとってな?出世してまう」 尋常じゃないくらい出世を恐れている袖野だったが そもそもスターどころか希望の光だなんて言い過ぎにも程がある。 今は全く何も書けていない人間に成り下がっているし。

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