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4-1 BLACK&GIRL
真っ暗闇の中、あなたの手を引いて歩くことが
俺には果たして許されているのでしょうか。
「ねえ聞いた…?経理部の彼、結局鬱になってやめたらしいよ」
「退職代行から電話かかってきたってさ…今月で何人目だよ…」
会社の休憩室ではそんな地獄のような話ばかりで、
最早なんとも思わないくらいには麻痺してしまっている。
そんなことよりもヨコの頭の中は恋人であるナナメのことでいっぱいだったからだ。
「みんなおっかない話してるね…」
目の前で愛妻弁当を広げていた裾川は、あちこちでヒソヒソと囁かれている噂話に苦笑している。
「どこに出しても恥ずかしくないブラック企業ですからね。
明日は我が身ですよ」
彼の隣で雨咲は涼しい顔で弁当を口に運んでいる。
「うーん….」
ミナミは珍しく大人しくしていて、カップ麺を両手に小さく唸っている。
「みんな…いのちはだいじにしよう…!?」
「ブラックの1番黒い部分がここに集まって来てますからね…」
お荷物課という不名誉なあだ名のついたヨコ達の部署は、
嫌がらせかというレベルで色んなところから面倒な仕事押し付けられており定期的に厄介事が舞い込んでくる。
会社内の特に上の方の人間にはあまり好かれていない4人組なので本当にそうなのかもしれないが。
「………2人とも早速大丈夫?」
ナナメのことを考えて黙っていたヨコと何か難しい顔をしていたミナミに裾川は心配そうに苦笑する。
「…え、ああ…すみません…ちょっと考え事してて…」
ヨコは静かに謝ると、小さなため息をこぼして
自分がこさえた美しい弁当を見下ろした。
恋人のナナメはちゃんと昼飯を食べているだろうか。
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