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4-10 空っぽ
食事を終え、食器を洗っていても
ナナメはいつまでも帰ってこない。
返事も全然返ってこないし既読にもならない。
いい加減心配にもなってくるし、何よりナナミを待たせてしまっているし。
彼女にはソファに座っていてもらって珈琲でも淹れてやるかと考えていると、
くるりとこちらに顔を向けてくる。
「ねー真壁サン」
ソファの背もたれ越しに大きな黒いリボンのついた顔がひょこりと顔を出した。
「これ大丈夫そ?」
ナナミはそう言いながら変な顔で笑っている。
なんのことかと彼女に近付くと、ソファの前に置いてあったローテーブルの上を指さしている。
そのテーブルにはテレビのリモコンくらいしか置いていなかったはずだったが、と覗き込むと一枚の封筒が置いてあった。
“ヨコさんへ”とある。
その異様さに心臓がどきりと凍り付き、ざわざわと嫌な予感に苛まれてしまう。
拾い上げて中を開封すると、一枚の手紙が入っていた。
“突然ごめんなさい。
心の整理と、自分の中でけじめをつけるために少しだけ家を空けます。
必ず戻ってきますし危ないことはしないので
ご安心ください
いつまでもヨコさんが大好きです。
ナナメ”
信じられないくらい綺麗な文字でそんな言葉が並んでいた。
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